発声の基本
Gemito体震動
★奇跡の発声!
アドリアーノ・トッキョ伝、武田式キューゾの発声法は、一般常識と全く次元を異とし、自然の原理に基づく神秘性を秘めた、世界に類がないことから感動的に「奇跡の発声」と呼びます。
大脳の命令によって骨髄(中枢)神経を刺激し、骨盤神経叢などにおける精神動力作用の興奮・痙攣の反射作用によるもので、息が声帯を振動させるのではありません。
〇発声論理のポイント
◆横隔膜の腱性の中心を下降・緊張させ、拮抗を保持する。
◆声門を閉じ、喉頭後部のV字型に開いた披裂軟骨を閉じ、声帯を緊張さ
せる(これをキューゾという)。
◆喉頭を下げ、ずり上げを防ぐ。
◆軟口蓋の平面化と懸擁垂のシワ寄せ。
〇発声技法のポイント
◆大脳の命令によって、腰の骨〈後腹〉や仙骨を強く握り締めて骨髄(中
枢)神経を刺激することが発声の始まりであること。
◆胸声の支持で横隔膜を緊張させ、ジェミト(体震動)を出すこと。
◆頭声の支持で喉頭後部のV字型に開いた披裂軟骨を閉じ、また、頭蓋に
おける共鳴腔を設定すること。
◆頭声の支持と胸声の支持の連携によって、歌う。
〈要点解説で概要を説明します〉
★発声技法の特色!
○芸術歌唱は【真声】で
「真声」とは、キューゾの発声によって声が腰から喉を飛び越えて直接マスケラ(顔面)で輝き、決して喉声にならない声をいいます。芸術歌唱というのは、キューゾの声でないと出来ません。いわゆる大口を開けて、開いた口で歌うのは芸術歌唱には向きません。だからそれは”ニセモノ”なんです。イタリア語は、ほとんど口を開ける必要はありません。
○声区の転換はない
奇跡の発声法は、声区の転換点は有りません。最低音から最高音域まで、一貫して頭蓋共鳴であります。
○発声技法の要点
奇跡の発声法では体のポイント操作を、便宜上「胸声の支持(三点支持)」と「頭声の支持」に大別し、胸声に支持では骨髄(中枢)神経を刺激して反射作用を起すとともに横隔膜を緊張させてジェミトを出し、また、頭声の支持では声帯の閉鎖と声の共鳴を担うというのが、大まかな動作になりますが、胸声の支持機能を借りなければ頭声の支持で機能を発揮することが出来ません。つまり、声は頭蓋で共鳴しますが、胸声の支持による神経刺激をはじめとするポイント各部の働きが土台になると云うことです。
A 胸声の支持〈60%〉
ジェミト〈体震動〉の語源はイタリア語で震えといいます。釣り鐘状に弛緩している横隔膜を下方へ下げると(平面化=緊張)、元へ戻ろうとするエネルギーが強く働き、これに対抗して緊張を持続するためのエネルギーが震動を起こします。
発声の始まりは、「大脳新皮質から下腹に精神弧を描き、骨盤神経叢を決断の意思で刺激する」と言い、これが胸声の支持のはじめの動作でありますが、実践的なポイントの操作は左右の両脚を前後に開き、
◇後腹〈腰骨〉を押して仙骨を強く握りしめ、骨盤神経叢(陰阜と
直上の錐体筋)を刺激、
◇後・側腹(脇腹)を左右下方へ張り出し、
◇背中を後ろへ引きつけて、剣状突起部を前に押し出して、
更に後腹を押し背中を引きながら、剣状突起部を支えとして上下歯の隙間から“スーッ・スーッ・スーッ”と息を吐き〈漏らし〉きます。この動作をリズミカルに何度も繰り返し、最後に脚を揃えて息を“スーッ”と長く吐きます。息がなくなっても背中を引いて剣状突起部に圧をかけ続けることによって、副交感神経が強く刺激され、ジェミトが出て参ります。
B 頭声の支持〈40%〉
頭声の支持というのは、胸声の支持による骨盤神経叢の神経刺激によって剣状突起部や横隔膜など発声諸器官が機能し、銀線のような細い本来音が顎から鼻下に挿入されます。そこで、剣状突起部(胸骨)を支えとして後頭部で声を斜め後上方へ引くことによってマスケラ(顔面)で輝くような共鳴が得られます。
創 始 者
武田哲宇先生
ベルカント発見の旅・イタリアへ!
声楽界に警鐘を‼
★経歴
1934(昭和9)年2月8日大阪の徳庵で生まれ、国立大阪学芸大学平野分校2年課程を修了して10年間小学校教諭。その傍ら大阪音楽大学二部声楽専攻を終了し、浅野慈仁師に教諭を辞ずるまで10年間教えを受けた。
★ベルカント発見の旅・イタリアへ
1967(昭和42)年7月28日横浜港からJTBのソ連旅行団の一員として出発、イタリア国立サンタ・チェチーリア音楽学校へ同年9月入校、元ローマ歌劇場一級ソプラノ歌手ペレア・ラッビア女史からソプラノ発声を習い、翌年7月25日修了試験に合格。
同校へ入学した9月から翌年4月まで、ローマRAI放送局専属ピアニスト、フェッラーリ師からベニアミーノ・ジーリの「吐く発声」を学び、1969(昭和44)年10月から翌1970年5月まで、アドリアーノ・トッキョ先生について、トッキョ先生が開発した新しいベルカント、“神経性発声・芸術歌唱法”を学ぶ。
★ベルカント研究所を創設
1970(昭和45)年5月に帰国し、アドリアーノ・トッキョ著『新しいベルカント「概論」』を一年かけて翻訳し、大阪の徳庵にベルカント研究所を開設して後進を指導した。
★声楽教育の改革を目指す
アドリアーノ・トッキョ先生が32年間にわたる研究結果として、 “自然に話すように歌ってはならない”と警告を発したように、大声で太い声で歌うのは、百害あって一利なし!
アドリアーノ・トッキョ先生の教えこそ、オペラやカンツォーネなど洋楽ばかりでなく童謡や歌謡曲(懐メロ)、また、声に携わるすべての人を「音声障害」から救える「奇跡の発声法」と確信された。
骨盤神経叢から喉を飛び越えて、喉を離れてマスケラ(顔面)で輝く「真声」こそ、究極の理想とする歌声である。胸を高く上げて歌うソプラノ発声法は誤りで、我が国の研究者が一日も早くこの警告に耳を傾けて、声楽教育を根本的に見直し、一からやっていただきたいと願った。
★最後に
特に東京音楽大学をはじめ、多くの音楽大学の教育者や学生、そして歌に携わる人々に是非武田式キューゾの発声法を学んでいただきたいと願った。
アドリアーノ・トッキョ先生
~ 神経動力作用の発声法 ~
32年間探求
トッキョ先生は、トスカニーニ氏やメトロポリタン歌劇場の支配人から若くして美声と素質を認められ、奨学金が支給されて学ばれた。ベニアミーノ・ジーリの代役としてオペラ『トスカ(ジャコモ・プッチーニ)』公演で、連続11回出場。しかし、喉を傷めてわずか数年で主役を降りる羽目となって、悲劇のどん底に落ちたという。
その後、美声を奪った原因の追及に乗り出し、スカラ座の舞台で当時発声の神様と異名をとっていたテノールの、アウレリアー・ペルティレ氏に“どのように音声を発せねばならないか”と尋ねた所、彼は“喉声で歌うな、それは嵐のfilo(線)を作ることだ”と、頭から恥骨までの長い線を描きながら答えられた。
〈1933~1934〉
この仕草が、「われわれにとって或る啓示になったのである」と、著書に明らかにされております。
トッキョ先生は音声学・解剖学・生理学など、ありとあらゆる書物を読みあさり32年間にわたる研究の末、結論として喉を傷めて美声を失った原因は、
“自然に話すように歌ったからである”と、断定されたのです。
その間において、ジユセッペ・ディ・ステファーノ、リーノ・ペンノ、ボナートなどの名歌手を輩出されました。
(若きトッキョ先生)
武田式キューゾの発声法
~ 経 典 ~
★イタリアのベルカント
著書のタイトル
INSEGNATO PRATICAMENTE MEDIANTE LE
LEGGI FISIOLGICHE DELLA FONAZIONE
TRATTATO
Interessa Maestri di canto o proff.Laringoialri
ベルカント発見の旅
〈複製印刷在庫あり〉
武田哲宇先生は、帰国後10年にして奥義を窮められました(1980・昭和55)。そして更に経験を踏まえて、アドリアーノ・トッキョ先生の教えこそ発声の真理を説いていると確信し、その教えが単にわが国の声楽家に対する警告ばかりでなく、全世界のオペラ歌手に当てはまることに気づき、2000(平成12)年9月1日『ベルカント発見の旅』を刊行されました。
武田式発声法誕生秘話
著書のあとがきから
般若心経を唱えて2年、いつもは鼻梁で遮られて上に抜けないお経を唱えている私の声が目の前に泡となって現れ、そのままどんどん上へあがっては消える。気づかないうちに上半身から力が抜け、顎からも力が抜けて唱えている般若心経の声が額で明るく輝いていた。
その日以来、立ち姿でも喉を離れた声で、いつでもどこでも自由自在に歌えるようになった。これが武田式の上級である。
指導作法
〈自家製本あり〉
経典は『ベルカント発見の旅』
武田哲宇先生が、足のし下から湧き出るような歌声を発見したいと願って、まさに血のにじむような思いでイタリアへ旅立ち、アドリアーノ・トッキョ先生が苦心して32年の歳月をかけて開発したキューゾの発声法を学び、帰国後「ベルカント研究所」を立ち上げて音大生や大学教授・歌手と、多数の方々を指導したけれど、武田式発声法をまともに習得できた人はおられませんでした。
両先生が、生涯をかけて手にした貴重なキューゾの発声法を幻のものにしてはならないと決意しました。よくか考えてみると、トッキョ先生の『新しいベルカント「概論」』は、専門家を対象とした発声法の理論書であって、指導書ではありません。武田哲宇先生著作の『ベルカント発見の旅』は、実践編ではありますが、どちらかというと精神面を重視したもので、発声技法としては具体性に欠ける面があります。
トッキョ先生から直に指導を受けた武田先生がおられないのですから、奇跡の発声技法の習得のためには、体のポイントを操作するための具体策が必要と思い立ちました。
そこで、実践の経典は『ベルカント発見の旅』でありますが、経典で理解が出来ない場合の補助教材として、自然の理法をひもときながら発想を転換して、著者が奥義を窮めた経験をもとに作成したのが、この指導作法であります。
組織・指導体制
声楽 Gemito 主幹のご挨拶
武田式キューゾの発声法/初代継嗣
橋 本 東 峰
品性を求め明るい社会のために!
私が学んだことをご紹介致し、ご挨拶に代えさせていただきます。神戸市長田区の「ベルカント研究所」を訪ねたのは2000〈平成12〉年2月8日、その日は奇しくも武田哲宇先生の生誕日であり不思議なご縁でありました。
武田先生は待ち構えていたように、ご挨拶もそこそこに直ちにジェミト(体震動)を出すレッスンが始まりました。動作の模範演技をはじめ、イタリア留学中における興味深いお話、そして帰国後の修練の課程などのお話を交えながらの指導でした。口を開けないで声を出すことも教わりましたが、なにせ初めてのことですから何も出来ません。“ジェミトが出なければ歌唱指導は出来ません”と言い、ジェミトを出すトレーニングが奇跡の発声法の要であることを知らされました。
真剣に汗だくになって5時間後、ようやく吟じながらジェミトらしきものが出せ、先生がこれをジェミトと認め下さり、帰路につくことができました。
ジェミトを出すためには足腰を鍛えなさいと言われたのでr、それからというものは、自宅から一キロ余りの所にある小高い裏山を「鶯の里」と名付け、ほぼ365日(12年間)毎朝雨の日も吹雪の日も丘に登って筋トレを続け、あらゆる所でトレーニングに励みました。
年に2回ほど武田先生を訪ねて実技指導を受けました。2年後に先生は体調を崩して入院することもあり、ついには施設に入りましたが神戸へ行った時は懇切にジェミトを出す指導をして下さり、また、座学のようにイタリア留学中のお話やトッキョ先生の指導など興味深い内容を詳細にお話して下さいました。先生は、一日も早く習得できるようにと期待をかけて下さり、その間においてはメールや手紙・電話などで丁寧に指導して下さいました。
2006〈平成18〉年7月23日〈日〉神戸市西区櫨谷町の養護老人ホームで指導を受けた折、すでにジェミトは自在に出せたのですが体各部の連携や内面の動きなど、そのメカニズムを体で理解するまでには至っておりませんでしたが、“これまでトッキョ先生亡き後、私が世界一を継いできましたが、もし私に何かがあったら先生が私の後をお嗣ぎになってください”と言って、トッキョ著『新しいベルカント「概論」』と、これを翻訳して記録した大学ノートの原本を授けて下さいました。
この時先生が強調されたことは、“芸術歌唱はキューゾの声でないと出来ません。大口を開けて歌うのはニセモノなんです。それが分かると日本一や、もうすぐお分かりになるでしょう”と。
それからも施設を訪問し、また手紙や電話で指導を受けました。電話で吟じて声を聞いて戴いたとき、“うん!出来た!”という先生の喜びの声を聞いたのですが、その10日後に先生は帰らぬ人となりました(2009・平成21年1月22日)。
武田式キューゾの発声法は中枢神経を刺激し、自然の理法に基づいて陰陽バランスの上に骨髄の芯から発せられ、頭蓋で共鳴し霊性を帯びた、その声は人の心をとらえることが出来、まさに奇跡の発声であります。
プロの歌手をはじめ、歌を上手く歌いたい人、声を生業とする人を問わず、すべての人々に是非関心をもっていただき、そして学んでいただきたいと願います。
心の琴線に響く声は、人の心を高尚にし、平和にし、肉体を健康にして幸せを招き、そして明るい社会に導いてくれるに違いありません。
洋楽部初代継嗣
東京都小平市 声楽家 鳥海 寮
自己紹介
私の技術探求の中で、特筆すべき出会いがありました。アドリアーノ・トッキョ先生〜武田哲宇先生〜橋本東峰先生と各々大変なご努力の元に受け継がれた奇跡の発声技法です。
クラシック専門の私が、吟詠家であられる橋本東峰先生の薫陶を受けるというところに、大きなヒントがあります。それは歌のジャンルを超えた「芸術歌唱の本質とはなにか!?」という神秘が解明されることであります。
アドリアーノ・トッキョ先生が自身の研究と並行して育てた弟子の中には、私の専門でありますテノール歌手の歴史に名を刻む名人、アンジェロ・ロフォレーゼ氏、ジュゼッペ・ディ・ステファーノ氏、リーノ・ペンノ氏等が含まれます。武田哲宇先生は、トッキョ先生が理論を完成された後の教え子ということになります。
このキューゾ唱法を学ぶと、喉を痛めない発声のメカニズム、健康と直結する歌のエネルギーの育て方、使い方について理解でき、年齢に逆行するかのように歌声が進化していくことになります。
もちろん、歌う分野によって、特質や約束事がありますから、それは大切に活かされる必要があります。この技法はその先にあるもの、もしくは内存するもの、と考えれば分かりやすいかと思います。
組 織
声楽 Gemito
武田式キューゾの発声法指導本部
全国研究会
武田式キューゾの発声法 全国研究会 | ||||
都市名 | 研究会名 | 会長名 | 分野 | 連絡 |
東京都 | 小平研究会 | 鳥海 寮 | 声楽家・演奏家 | |
川崎市 | 川崎研究会 | 中川郁太郎 | 声楽教授・指揮者 | |
世田谷研究会 | パリ中山 | ギター平成流し組合代表 | ||
品川研究会 | 荒井精水 | 岳精流日本吟院・吟詠家 | ||
江戸川研究会 | 佐藤正志 | 精修流・ 吟詠家 | ||
埼玉県 | 富士研究会 | 吉田峯男 | ギター研究ねずみの会主催 | |
神奈川県 | 藤沢研究会 | 山本みどり | Oase〈オアーゼ〉代表・心理士 | |
三浦研究会 | 長谷川煌研 | 吟詠家 煌研会会長 | ||
茨城県 | 茨城研究会 | 明嵐久美子 | 声楽一般 | |
札幌市 | 北区研究会 | 斎藤興峰 | 東峰流・吟詠家 | |
白石研究会 | 馬場正鵬 | 朝翠流・吟詠家 | ||
千歳市 | 千歳研究会 | 横山郭峰 | 東峰流・吟詠家 |
指導体制
★指導所
★指導方法
〇実地指導
〇遠隔指導
〇教材利用
要点解説
★究極の発声技法
アドリアーノ・トッキョ伝、武田式キューゾの発声技法は、骨髄(中枢)神経を刺激して、神経の興奮・衝撃による反射作用で声を発するもので、そのためには基礎から築き上げなければ神経回路が創造できず、発声諸器官が機能しません。しかし、修練を積んで奥義を窮めることがで出来れば、骨盤を反らせて仙骨神経を刺激するだけで気を後頭部に当て、最低音から最高音まで一貫して頭蓋共鳴で歌うことが出来ることを最初に明らかにしておきます。これが、奇跡の発声法の究極の姿であります。
★自然の理法を重視
1 陰と陽。
会陰から頭頂にかけて前面は「陰」、背面は「陽」であります。奇跡の
発声法で動作(操作)をする体のポイントは、チャクラとほぼ同じと考えら
れております。チャクラは、体の前面と背面に対になっておりますが、神
経刺激によるキューゾの発声技法(奇跡の発声法)を学ぶ上で、このことは
非常に大切であります。
陰陽の原理と相反する作用などでバランスをとりますが、その動作とし
ては、
◇求心と遠心~一挙動による同時作用。
◇動対反動~押す場合は引く、引く場合は押す動作。
◇屈伸とテコの応用~
2 体の重力や引力を活用します。
首から上の頭部は共鳴腔ですから、全く力や圧をかけません。首から下
は背筋を反らせ、胴体は上下・前後・左右に引き合い押し合います。そし
て胸骨や背中、脚や尻には力ではなく重力や引力による圧力をかけます。
3 中枢神経を刺激します。
一般的には腹に力を入れるとか、また丹田に気を入れるとかやっており
ますが、それは理法に適うことではありません。第二脳といわれる丹田
は機能するところでありますが、下腹(丹田部)の筋肉を刺激しても抹消神
経が支配している所ですから、部分的に機能はしても一方的でバランスが
とれず、相反する作用は起こりません。
丹田を正しく機能させるためには、骨髄(中枢)神経の下腹部を支配し
ている「骨盤腹腔神経(仙骨神経ともいう)」を刺激します。その動作で
すが、腰骨や仙骨を強く握りしめると骨盤神経叢(陰阜とその直上の錐体筋
や腹直筋)が刺激されて、初めて丹田が機能するというメカニズムでありま
す。このようにして、奇跡の発声技法のすべての動作は、遠隔的・間接的
にポイントを操作致します。
(注)下腹と胸郭の相互関係
神経作用とは別の問題ですが、胸郭を張ると連動して下腹が凹みます。
胸郭を使うためには左右の両肩を軽く引き上げて背中を反らせます。
また、背筋を反らせると腰骨に圧がかかり骨盤がそ反れるので、下腹
が凹みます。
丹田を使うために下腹に力を込めることは理に反することであり、
ここに述べたように、間接的な動作が好ましいのであります。
★呼吸に関して
一般のアペルト(解放)発声は、息を吐いて声を出すといわれます。極端な言い方をすれば、それは呼気を声帯に吹き付けて声を出すということで、声帯に無理がかかりますから発声そのものが苦しいものになります。息で声を出すのではなく、声に伴って息は自然に消費されるのであります。息で声が出るというのであれば、如何にして息を吐くかということになるのですが、そうではありません。
分かりやすく表現すると呼気は発声に包含されるものであって、如何にして声を発するかという「発声技法」だけに注意を払うだけで良いのです。ですから、発声上は呼吸と言う言葉を使うのは適切ではなく、吸気法と発声技法の二つのことを考えることです。歌唱時においては、発声技法と吸気(息継ぎ)が二大要件であり、発声技法が身についても吸気法が伴わなければ、発声法は生かされません。それほど吸気法は大切なものであります。
さて、それでは発声上の吸気法はいかなるものでしょうか。一般に「腹式呼吸」という言葉が使われますが、これも慣習として用いられているもので、その意味するところは腹式吸気、つまりお腹を膨らませて息を吸うとを示唆していると言葉だと思われます。そして、お腹を膨らませると息が沢山入るという意味で使われておりますが、これも理に反し全く誤った考えであり、下腹を凹めてする「逆腹式吸気」が正しい吸気(息継ぎ)法であります。下腹を凹めてどうして息を吸えるのかと思うでしょうが、それが理法に適っているのです。
次に説明する横隔膜の働きやメカニズムと直結するテーマですが、そのことは省いて吸気の原理についてのみ解説します。
ジェミトを出す「胸声の支持」で横隔膜を緊張(平面化)させるのですが、主な働きをするのが背骨に接続している腰方形筋と腸腰筋・腸骨筋であります。腸腰筋には大腰筋と小腰筋の二つが左右に有り、横隔膜を落下傘と仮定すれば、左右の腸骨筋と併せて6本の筋肉が落下傘の紐の役割をします。下腹が凹むと6本の筋肉が収縮して横隔膜を下方へ引きつけます。その結果、横隔膜が緊張(平面化)するので肺臓が広がって息が沢山入ります。お腹を膨らませた場合は、釣り鐘状になって肺臓を押し上げている横隔膜は、逆腹式吸気時に比べて平面化しないので肺臓の拡張が弱く、吸気の量もそれほど多くなりません。
吸気は、横隔膜の他に胸郭内の呼吸筋の拡張作用も関係しますが、腹部に関するメカニズムは以上の通りですから、是非この原理を理解していただきたいと思います。
奇跡の発声法は、歌唱時においても常に下腹が引かれております。
★横隔膜に関して
四つ足の生き物は、胴体が横位置なので肺蔵や心臓と内臓は左右に置かれておりますが、肺臓や内臓が左右に移動するエネルギーは概ね均等で、したがって肺蔵や心臓と内臓を仕切る横隔膜にかかる圧力も拮抗し、横隔膜は平面的であろうと考えられます。
しかし、人体の横隔膜は腱性を中心に釣鐘状に盛り上がって〈弛緩して〉おりますが、何故ならば人は立位で行動するので重い肺臓や心臓が腹部に落ちないようにするためには強力な支えが必要でり、平面では支えきれないので力学的に必要な機能であろうと思います。
人体も横になったり、ひざまづいて雑巾がけをする時のように胴体を横にすると、横隔膜は生き物と同じように平面化するのではないだろうか。横になると腹式呼吸が楽に出来たり、眠ることも出来るのはそういうことではないだろうかと考えるのでありますす。
(注)呼吸と自律神経は深い関わりがあり、また横隔膜の機能と副交感神経は
関わりがあります。
人体の骨髄神経は“人類の祖先の形質の名残りなのか、四つん這いの姿勢の鉛直下方(地面に対して垂直)に神経は伸びている”とあります。人体の神経の作用が原始人類と変わっていないという風に解釈して、興味深く思いました。
左右の手をついて階段を昇ったり、四つん這いになって歩いたりすると、手足の運びは馬や牛など四つ足の生き物と同じであります。勿論、内容は良く分かりませんが人体の神経のメカニズムは、四つ足の生き物と変わらないということに納得出来るのです。また、“動物は病気にならないが、人は二本足で生活するようになって背骨に歪みが生じたり腰を傷め、また、血液の循環が悪くなるなど、それが元で病気になる。生き物にならうべきだ”という論に接したこともありました。それから生き物の生態に関心を抱き、四つん這いになって声を出すなど色々と考えました。短絡的で極論ですが、人体は立位で生活するために相応しい体の機能になっていない。したがって四つ足の生き物のような自然の状態になく、その結果何かと体に負担がかかるのだということです。
奇跡の発声技法には、自然の原理が働いていることがわ分かりました。アドリアーノ・トッキョ先生は、喉を痛めたのは“自然に話すように歌ったことが原因だった”として、自然に話すように歌ってはらないと警告しておりますが、人体が生き物のように自然の状態にないことを認めておらないから、そうのように判断されたことであって、言い換えるならば“不自然な状態で歌ってはならない”ということになるのです。何故ならば、結論として奇跡の発声法は、四つ足の生き物に習う所が多々あるのであります。最も典型的なのは横隔膜の機能ですが、生き物のように横隔膜を平面的に緊張させることは至難であることから、“歌は横隔膜との戦い”という言葉が生まれたのではないだろうと思うのであります。
★四つ足の生き物に学ぶ
奇跡の発声技法では、四つ足の生き物の姿(体型)に学ぶことが多々あります。つまり、それは自然の理法に学ぶことであり、そして最も合理的な手法であると考え、感覚的ですが四つ足の生き物の体の状態を踏まえて、発声技法との関連を簡潔に述べることと致します。
○胴体
1、四つ足の生き物は胴体が横に長く伸びて、尻と肩が引き合い、重力と引
力の作用で胴体(胸と腹部)が地面に垂れ、下腹(人体の丹田部)が引か
れて(凹んで)おります。
人体の場合、立位では重力や引力の作用で胴体が圧縮し、つっこまって
いるので、発声時は背伸びをするように胴体を伸ばし、かつ、前後・左右
に拡張しなければならなりません。
2、生き物の四肢には重力がかかっておりますが、人体は腰や左右の脚に全
身の重力がかかっているだけで、肩には重力はかかっておりません。
諸事万端において、“肩に力を入れるな、力を抜け”と言いますが、この
言葉からは肩を使ってはならないというような感じを受けるのです。肩が
動かなければ歩くことさえ出来ませんので、手足と同じように肩は大事で
あります。したがって力という言葉の意味合いを吟味し、奇跡の発声法で
は力を加えるのは仙骨を握りしめて神経刺激をする場合だけで、その他は
すべて「圧」と考えております。
人体も四肢のバランスは大切で、左右の両肩を意識するだけで安定し、
行動が出来ます。発声において、胸郭(胸骨・剣状突起部)や背中は声を
作る元なので、特にその動きは大事でありますが、その際の肩の働きが重
要になります。
左右の肩を軽く上に上げて後ろへ引くと背中が引け、背筋が反れて胸郭
が前に押し出され、剣状突起部の神経刺激が行なわれます。胸郭を自在に
動かして歌うのも肩の動きによるものです。極論すれば。肩を意識して歌
うことは発声上有効な手段であることを実感しております。
肩は、ものを言いませんが顎の作用と同じように大事であると思います。
3、生き物は下腹が引かれております。これは、次の横隔膜との関連ですが、
胴体が伸びて重量がかかっているので、自然に下腹が引かれるのです。し
かし、人体は上からの重力や引力の作用で体は縮まっており、体の下部に
重力がかかっていることから、下腹は引かれないのではないかと考えられ
ます。発声時は、常に下腹が引かれていなければなりませんが、それは横
隔膜を緊張させて弛緩しようとするエネルギーと拮抗状態を保持するとい
う意味であります。
○次は奇想天外の発想の話です
奇跡の発声法は口で声を出すな!と言うことです。詩吟の世界も同じように“口で声を出さないで腹の底から出せ”と、先人はやかましく言っております。
奇跡の発声法習得のためには、発声諸器官に関することは四つ足の生き物の形状にならって、体のポイント操作を行うのでありますが、さて生き物の声は何処で出しているのだろうか?体で声を出すということは、どういうことなのでしょうか?
辞典に、人間や生き物が発声器官を使って発するのを声といい、発声器官を使わない昆虫など羽を使ったものは音というとあります。耳に聞こえる風や波の音も音であります。
口で声を出してはならないということから発想されたことは、一般常識を超越し奇想天外に考えるのですが、言葉になる響きを声といい、それ以外の耳に聞こえるものを音という風に考えてみてはどうだろう。生き物の声は口で響くのではなく全身でというか、頭で響いているように感じます。それは、声でなく音とすれば理屈が成り立つような気がするのです。
口は元来物を食べるための器官ですが、人が言葉を喋るようになったことから口を使うようになったのではないだろうか。したがって歌う時も口を使うようになった。考えてみると、歌から言葉を取って楽器のようにメロディーだけを奏でるならば、人も生き物と同じように口を使わないで音を出すことが出来るわけであります。奇跡の発声法は、まさにこのような原点にたどり着くわけで、言葉そのものを口を動かして出そうとはせず、大脳の命令で言葉を発すれば歌を歌うことが出来るようになっております。つまり、それが「体声」というもので、中枢神経の刺激作用によって全身のポイントが連携し、声が体の芯から迸るのであります。
馬や羊の嘶きを聞くと、口ではなく頭で声が出ているように感じられます。奇跡の発声法では、頭声の支持のアルティコラーレ(母音発声の型)でIOUの
縦型は、“ロバのいななきのようにハイーン”と響かせるのですが、まさにそれは生き物の声の響きを真似るものであります。実は、ハイーンというのは大脳の命令、つまり、そのように声を出すのだと意識することで、口を開けなくても声を出すことが出来るのであります。
発声の理論書に、日本語の母音などの発音に関して構音器官を細かく操作するよう解説しておりますが、外国人は別として日本人は遺伝子をもっておりますから、奇跡の発声法では全くその必要がありませんし、むしろ障害になります。したがって、口を大きく開けて声を出しましょう! 声を前に出しましょう! というようなことは邪道でありまして、生き物ように体が伸びて臀部
(尻)が引かれておれば、その重力で神経刺激作用が働き、また、その反動で声
が頭で響き遠くへ飛んでいくのであります。
大まかに言えば、声は口から出すものではなく、このようにして、声は体から出すものであります。
★キューゾの意義と「真声」
武田式発声法で「キューゾ」とは、声帯を完全に閉じることを意味しております。横隔膜を緊張させることによって喉頭前部の甲状軟骨側の声帯が前へ引かれて声門を閉じ、もう一方の喉頭後部のv字型に開いている披裂軟骨の部分を披裂筋で内転させて声帯後部も完全に閉じ、二本の声帯が緊張している状態を言います。
真声とは、胸声の支持と頭声の支持の連携による、神経刺激の反射作用で、マスケラ(顔面)で響く細いが芯のある強烈な輝きを放ち、正しいヴィブラツィオーネ〈振動〉がついた声であります。それは単なる「鼻腔共鳴」の声ではありません。
★訓練は強力に、歌唱は柔軟に
トレーニングは、ジェミトを出す胸声の支持の動作が主となりますが、神経回路を創造するために眠っている体各部の筋肉や筋を目覚めさせ、これが連携して働くように総動員して強力に働きかけます。道なきところへ道を拓くのですから、最初は力強く荒々しくなります。トレーニングを重ねているとポイント操作のコツが分かり、徐々に力を入れなくてもジェミトが出せるようになり、ついには、わずかに意識することでジェミトが出せるようになります。
歌唱時も、ジェミトを出す動作とほとんど同じですが、力まないで体を柔軟かつ弾力的に使って歌うのであります。
★声は腰で操る。ポイント意識は点で!
歌は、口の開閉で歌うのではなく腰でコントロールして歌う。口の開閉はその結果である。
イタリア語は母音が主ですからほとんど口を開けないで歌えますが、日本語は子音中心なのでイタリア語で歌うより口は動きます。
腰というのは、胸声の支持のジェミトを出すトレーニングで、後・側腹を左右下方へ拡張する動作の後腹を腰と呼び、その位置はヘソの背部、仙骨と腰椎の間あたりになります。
発声は、体の一部分ではなく全身の各ポイントが連携して声を出すのでありますが、その場合に発声諸器官を指揮する所がなければなりません。それが腰であり、連携している必要なポイントを腰を動かして操作するのであります。
声を出すための体のポイント操作で大事なことですが、体の構造上胴体は背骨で繋がっておりますから(骨髄神経もある)、腰だけを動かそうとしても動かすことが出来ません。先に臀部を動かさなければ腰は動かず、臀部を動かすと背中も同時に動きます。また、ジェミトを出すときや歌う時は弓を射るように背中を後ろへ引きますが、この場合も同じように腰や臀部が動きます。
つまり、腰や背中は感覚的に意識するだけであって、動作を起すために①意識する所と実際に②動作を起す所、そして、その結果③作用する所は別なところにあるのです。何故か説明は出来ませんが経験上知り得たことであり、発声技法を学ぶ上で非常に大切なことであります。指導の現場において、受講者はこのことが知識として把握できず、また体で感ずることも容易ではないようですので、テコの三点(力点・支点・作用点)もそうですが、三段論法の必要性を
強調したいと思います。
体のポイント操作に関しては、ポイントを面で捉えると意識が集中出来ませんから、点で意識します。また、立位での重心を左右の脚に均等に置くのは基本としても、何れか片方に重心を置いた方が気が分散しないで集中出来るように思います。歩く場合も、スキーもスケートも、野球でバットを振るのも、片方に重心を置くことを思うと、発声上においても考慮すべきかと思います。
神経刺激は 仙骨で!
腰の動作と関連して、発声の始まりとする神経刺激について述べます。骨髄(中枢)神経は尾骶骨から脊椎の上部まで連なってあり、体各部を(末梢神経で)支配しております。
仙骨からは「骨盤腹腔神経(別名薦骨神経)」が下腹を支配し、骨盤神経叢(陰阜や直上の錐体筋、それに連なる腹直筋)を刺激し、また尾骶骨は会陰をはじめ一部は骨盤神経叢をも支配しております。したがって、「腰で声を操る」というのは動作ですから、発声の始まりの中枢神経の刺激は、腰を押して仙骨を強く握りしめ、骨盤神経叢を刺激するとともに、各ポイントを操作して発声諸器官を機能させる総合指揮所が腰であるということが出来ます。
経験を積むと分かりますが、その時々において感覚が微妙に変わります。何
事も基本を大切にしますが、それに縛られて解釈を厳にすると見えない場合がありますので、時には少々の幅を持たせ、また、視点を変えて裏から横から探ることは意義のあることだと思います。
★奇跡の発声技法における自然の原理(理法)
◆陰と陽はすべての事象の原理であり、発声上も非常に大事であります。体の前面は陰・背面は陽であり、陰陽の相反する作用が働き、「人」という文字のように支えられてバランスがとれ、安定します。一方的に下腹(丹田部)に力を込めて凹めると、バランスを取ろうとして余計なところに力が及んで正しい発声が出来ません。ですから、力学的には下腹の背面の腰とか仙骨に力を加えることで陰陽のバランスがとれて正しく機能します。
一方、神経支配という観点からは、骨髄(中枢)神経は陽の部分、つまり背面
の背骨にあるので、発声の動作を起こす場合は前項で触れたように腰を押し、仙骨を強く握りしめて骨盤神経叢を刺激することによって丹田が機能するという仕組みですから、力学的にも神経支配の観点からしても機能するところを直接刺激しないで間接的に、遠いところで動作を起し、陰陽のバランスを取るのであります。
声をマスケラで響かせるからと言って、一方的に前面の眉間や鼻下などに力を込めてはいけないのです。背面の後頭部に意識を置いて背中を引いて声を出すと、鼻下や小鼻の神経を刺激して頬骨に反射を起し、背面と前面の陰陽相反する作用でバランスがとれて頭蓋で共鳴し、顔面で声が響くように聞こえるのであります。
◆求心と遠心ですが、これは引き締める一方で拡張するという作用で、この相反する動作を同時に、一挙動で行います。仙骨を握りしめ、背中を引いて剣状突起部を引き締めながら後・側腹を左右・下方へ拡張するという、高度な技法でありますが、横隔膜を下から引っ張り、上から押さえて、鳩尾を起点として胴体を上下、前後・左右に拡張するのであります。
◆動対反動という作用ですが、押す場合は引いてやることで有効となり、逆に引く場合は押すと効果が発揮されます。胸郭を張り胸骨を支えとする場合は胸郭を前に押すのではなく、背中を後ろへ引くことで胸骨に圧がかかって支えが出来ます。この原理も陰陽の相反する作用であります。
また、生き物のように体を伸ばすことによって仙骨神経や尾骶骨の神経が刺激されますが、鳩尾辺りを起点として臀部(腰周り・尻)を下方へ押し、頭を突き上げるようにすると背筋を伸ばすことが容易に出来、体の各ポイントが連携して機能するようになります。
◆屈折とテコのさ作用ですが、延べ棒のような体では神経刺激も出来ず、そし
て美しい声が出せません。テコを使い、体を屈折することで神経が刺激され、力まないで声を出すことができるのです。そのために、ジェミトを出す時も歌を歌う時もテコを使います。
◆下腹〈丹田部〉と胸郭は反比例の関係にあります。胸郭を張ると、これに連動して下腹(丹田部)が凹みます。また、後腹を後ろへ引いたり斜め後ろへ押すと下腹は引けます。すでに述べたとおり、下腹だけを力んで凹ますことは力学的にも、また神経作用の面からも理に反するということを肝に銘じて下さい。
★顎の働きと声の支え
支えというのは、上部にある物が下へ落ちないように持ち上げることを意味しますから、声と物を持ち上げることとは全く別問題ですが、分かりやすいので物に例えて解説します。
声が10キログラムと仮定すれば、声を出すにはそれ相当のエネルギー、すなわち「圧力」、一面「力」というものが必要です(奇跡の発声法ではテコを使うのでエネルギーは可なり弱くて良い)。その圧は筋肉ではなく骨に、つまり胸骨や剣状突起部にかけます。
発声、すなわち歌う時には弓を射るように背中を後ろへ引きつけます。背中を引くと、胸郭が張り出し胸骨や剣状突起部に圧がかかります。この圧によって声が屈折して美しい響きになるのです。
そこで重要な働きをするのが「顎」であります。支えを強くするためには体を屈折し、かつ緊張させなければなりませんが、顎を胸骨や剣状突起部に接近させることによって腰や仙骨の引き締めが強められ、背中の引きによって胸骨の圧も強まり、声の支えが容易になります。もし、顎を全く使わないとすれば屈折や緊張作用が起こらないので、正しくポイント操作が出来なくなり、結果として神経刺激作用も弱まってしまいます。
ここでは説明が出来ないので飛躍的な表現になりますが、顎には歌う楽器の形を作る主要な役割があり、そして基本としては一音一音を発するごとに構えて胸骨に圧をかけ、これを支えとして歌いますが、顎はそのためのキーポイントになるのであります。
また、音域や声の強弱などに応じて声の支えを強めたり弱めたりしなければなりませんが、顎の引き具合によって関連するポイントの操作も適切に行うことが出来るのであります。
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